【2015年新歓】伽藍堂(文芸サークル)

2015.04.23

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深夜に及んだ映画鑑賞も、ようやく終わりを告げた。ディスクの静かな回転は止まり、どうしようもなくくだらない、ただただ下衆なバラエティ番組を32型のディスプレイは写し始めた。

色目使いのAV嬢に群がる、ひな壇の芸人の視線……品性の無いざわめき。シャワーを浴びてさっさと寝よう──そう思って、僕はテレビのリモコンを取ろうとした。

おかしい、手の届く場所に置いたはずだ──僕はほんの微かな焦りと苛立ちを感じながら、座椅子に身を任せたまま、ばたばたと周辺を探った。足元、カーペットの上、新聞紙の下、チラシの隙間……だが、手に触れるものは虚しく、リモコンが視界に入ることはなかった。画面では、MCの男性芸人がセクハラまがいの暴言で、観衆とひな壇の汚らわしい笑い声を催していた。僕のフラストレーションはより一層強まった。

座椅子を離れるとリモコンはあっさりと見つかった。なんのことはない、背もたれの裏にあったのだ。見つかった瞬間に、苛立ちは最高潮に達した。外部への不快感、自己への嫌悪……僕はリモコンを握りしめた。赤いスイッチに人差し指を当てた、そのときだった。

 

「キミのその噴き出しそうなルサンチマンを、爆発させてみないか!」

 

CMの音声を流すスピーカーが、そう叫んだ。思わず僕は、その画面に見入ってしまった。リモコンを持つ拳が、緩んだ。

「ライター、エディター、詩人、俳人……。文芸サークル伽藍堂はそんな欲求不満に応えます。昼休みの経営棟206号室で、キミを待つ!」

赤いカーディガンを着たつぶらな瞳の男の子がそう言うと、次のCMに入った。画面に向けられた僕の凝視はそこで途切れた。人差し指に僅かな力を込めて、テレビの電源を落とした。

 

思えば、入学式で配られた掃いて捨てるほどのチラシには目を通したが、まだサークルを決めていなかった。新歓期も終わろうとして、そろそろ初顔合わせのコンパが開かれ始める頃だ。しかし、どのサークルにも魅力をいまひとつ感じることができなかった。

 

文芸サークル、面白そうじゃないか。僕は一抹の野心が芽生えたのを感じた。昼休み、経営棟の206……一体どんな奴らが集まってるんだ? 僕の期待は膨らんだ。一発、予定調和をぶっ壊して僕の怨嗟の昂りを世に曝け出してやろうじゃないか。

 

風呂に向かう僕の足取りは、今そこにある鼓動を抑えきれずにいた。

 

☆連絡先

前迫優輝

ynu_bungei@yahoo.co.jp

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